老老介護について
数か月前から、人が人を裁くことについて、
いろんなことが頭を巡っているのですが、
そんななか目に止まった記事について、
書いてみたいと思います。
12月3日（金）の朝日新聞社会面より
見出し
「寝たきりの姉と２人 生活保護も施設も
拒んだ末」
「『老老介護殺害』」に猶予判決
寝たきり状態の姉（84）を殺害したとして、
懲役３年、執行猶予５年の判決。
https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S15131239.html
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裁判長はこの日の判決で
「第三者に助けを求めることはできたが、
『生活保護を受けてまで生活したくない』との
考えから抜け出せなかった。非常に苦しく
絶望的な状況での犯行で同情できる」
「憎悪や怒り」を理由に殺していないことなど
から刑の執行を猶予した。
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要介護状態も進み、経済的にも限界で、
それでも「人様に迷惑をかけてはいけない」
という思いから、施設入所のために必要な
生活保護受給申請を断った末の出来事。
相手に対する「憎悪や怒り」からの行為では
なく、本人も高齢で、精神的にも限界で、
もう、どうしようもなかった。
これは東京地裁での判決ですが、同じ日に、
仙台地裁でも同様の判決が出されています。
（2021年12月2日）
FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/279370?display=full
85歳の夫を介護していた83歳の妻が夫を
殺害した事件で、こちらも懲役３年、執行猶予
５年。同じように、周囲に助けを求められず
犯行に至ってしまったことに同情できる、と
いう趣旨のことを裁判長が述べています。
こちらの記事は、老老介護についてさらに
詳しく書かれてあり、ポイントとしては、
以下のようなことです。
・老老介護の世帯は増加している
・プライバシーの壁があり、実態は把握
しきれていない
・特に75歳以上の人は、我慢や忍耐を善とし、
他人の助けを潔しとしない傾向がある
・介護に関する制度をよく知らない
私たちが生きる社会は、法律というルールが
あって、それがあること、そして大多数の人は
それに反することなく生活していることで、
社会の安定がある程度保たれている。
殺人というのは、刑法で罪とされている
行為で、おそらく、最もしてはいけないことと
して、多くの人に認識されていることだと
思います。
けれども、自分自身の毎日の生活の中で、
「罪に問われる、どうしよう」とかいう
問題じゃなくて、自分が生きることも
家族を生かすことも、もうできない、という
状況になり、それを何とかするために、
その人を殺して私も死のう、と思った。
普通に暮らしていた人が、突然悪い人になって
罪を犯すわけではなくて、日常生活の中に、
そうしてしまう可能性はあるということ。
それを、裁くとなったとき…
そうだなぁ、今回のような判決に、なるよな、
と私は思いました。
行き詰まったからって、殺さなくても…とは
思ったけれど、うーん、そうでなければ、
介護も自分の世話もやめて、２人衰弱して
いくのを待つ、とかになるのかなぁとも思い。
こういう時、「迷惑になるとか言ってないで
生活保護受ければよかったのに」とか、
「もうちょっと行政やケアマネジャーが
踏み込んで対応できなかったのか」とか、
「子どもや周りの人が助けてあげれば」とか
考えるのは簡単なんだけど、実際、そんなに
うまくいくものじゃないですよね、人間の
行動って（だから何もしなくていい、ってこと
じゃなくて、現実のどうしようもなさは
なくしきれないということ…）。
高齢化が進む日本社会で、この問題は
かなり重いものだなと感じました。
必要な時に、必要な介護が受けられるように、
家族がその責任を一手に負わなくていいように
と、介護の社会化を目指して介護保険制度が
出来たはずだけど、受けるべき人たちの意識が
ついていってないこともあるし、制度を担う
人材も財源も十分ではないし。
そして、もう生きなくていい、と本人が
思ったところで、好きな時にやめるわけにも
いかないし。
やむを得ないよね…という思いを、共有する
判決なのかな、と思うと、何とも言えない
気持ちになります。
今日もお読みいただき、ありがとうござい
ました。
